地域発展の起爆剤―高レベル放射性廃棄物の最終処分場 第 11 回 技術は安全ですか?日本に適地はあるのですか(1)火山の影響

日本列島は火山や活断層だらけで地層処分を安全に実施できる場所はないのではと言われます。今般、国が科学的特性マップを提示しその中で科学的に見て地層処分ができる可能性がある場所を示しました。日本においても火山の影響を避けて地層処分が可能な場所が広く存在することを解説します。

火山の影響

地層処分において火山の影響として着目するのは、処分場へのマグマの貫入・噴出によって、放射性物質が生活環境へさらされることです。そのために火山の影響のない場所に処分場を設置する必要があります。

世界の火山

地球の構造は一番外側に地殻があり、その内側にマントル、一番中心に核があります。この地球の地殻とマントルの中の上部の表層に近い部分は固い岩石圏で構成されており、この岩石圏は10数枚の大きな板状の岩盤で構成されています。この岩盤をプレートと呼びます。このプレートは非常にゆっくりと動いており、プレート同士が衝突し一方が沈み込むところと、プレートが広がりマントルが上昇し新たなプレートが生成するところがあります。火山や地震はこのプレートの境界で多く起こっています。(図1の火山の分布で多く存在するところ)

図1 世界の火山の分布

日本列島における火山の成り立ち

日本列島の火山活動もプレート運動と密接な関係があることがわかっています。日本列島は周囲を図2のように4つのプレートで囲まれており、現在もプレートが動いて活動しています。日本周辺ではこ のプレート同士が衝突して一方のプレートが片方のプレートの下に沈み込んでいます。このプレートの動きは、過去数十万年から数百万年間変わらずにあり、この動きの傾向は急に変化しないことから将来10万年程度は著しい変化はありません。したがって、火山の分布や発生も現在の状況と大きく変化しないと考えられます。

図2 日本列島周囲のプレート

日本における火山発生のメカニズムは西南日本の日本海側を除き、図3に示したようなメカニズムで火山が発生します。これは、水分を含んだ海洋プレートが大陸のプレートの下に沈み込み、温度、圧力が上昇して岩盤から水分が放出されます。この水分の働きによってマントルが溶けやすくなり(溶ける温度が下がり)、一部が溶けて上昇し、マグマが形成されます。これが上昇して地表に噴出して火山になります。マグマが発生する深さは地下100km以深ですので、多くの火山はプレートが沈み込む海溝から一定の距離をおいて発生するため火山は海側から一定の距離で帯状に存在します。したがって、日本列島の中でも火山が存在しない地域が一定の広が りを持って存在します。


図3 沈み込み帯におけるマグマ発生モデルの例(巽、1995 を編集)

次に、火山の位置の変化について見ますと約260万年前~80万年前に活動した火山と80万年前~現在まで活動した火山の位置を比較すると、図4に示したように大きな変化が見られません。


図4 日本列島における火山の分布の変化(日本の火山(第3版)に基づき作成)

以上から、火山の位置は概ね200万年前から大きな変化はなく、同じような場所で繰り返し火山活動があり、現在火山がないところに新たに火山が発生することは、将来的に見てもないと言えます。

火山の影響範囲

火山の分布は限られた地域に限定され火山がない空白域があることがわかっていますが、火山が影響する範囲を見てみると、マグマが地表に噴出した火口の位置は、図5のように概ね半径15km の円の範囲の中に分布しています。したがって、火山の中心から半径15km の外側では火山の噴火によるリスクは低いということが 言えます。また、カルデラ内は15kmを超えても影響があるので避ける必要があります。火山の影響を地温で見ますと、図6のように火山の近くは地温勾配が高く地表近くまで温度が高いですが、10数km 離れるとほぼ一定になり、火山による地温への影響は顕著でなくなります。このように火山の影響範囲も火山から10数km程度に限定されています。

図5 火山の影響範囲(NUMO パンフレット)

図6 火山中心からの地温勾配の変化(梅田他1999)

火山の影響のない場所

国が定めた科学的特性マップでは、第四紀火山から半径15km 以内は好ましくない範囲とされていますが、それ以外がすべて地層処分に適しているわけではありません。

図7 比抵抗構造解析から地下のマグマ等を検知する技術の 測定例

現在火山の噴火が認められないところでも地下の状況を測定してマグマの存在を確認する手法も開発されており、現在活動している火山ばかりでなく、将来の可能性も含めて火山の影響範囲が特定できるようになっています。この例として地下の比抵抗(電気の伝わりやすさ)の分布を測定する技術があります。電気が伝わりやすい所(図7で赤の領域)は比較的流動性の物質があることを示すので、マグマのような流動性の物質がある可能性があり、そのような場所はさらに精密に調査してマグマの有無を確かめることができます。 火山が多いといわれる日本でも、火山の影響がある範囲は限られており、現在火山がある場所を避ければ、多くの場所で火山の影響がない所を特定できると考えられます。このような火山の影響が認められない場所は日本の国土の約70%に及ぶと見られます。実際にサイトを選ぶ段階では、段階的な調査で徐々に詳しく調べていくので、地層処分システムに著しい影響が起こると判断される場合には、地層処分サイトから回避します。 このように日本国内でも十分に地層処分に適した場所を選ぶことが可能です。

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