高レベル放射性廃棄物とは何?どんなもの -地層処分の安全性を説明する-

高レベル放射性廃棄物がどのようなものか、いろいろなところで話題になりますが、世の中に広まっている概念や特徴の説明には誤解や間違いが見受けられます。高レベル放射性廃棄物は既に発生しており、その特性を正しく理解し、キチンと対応することが重要です。

高レベル放射性廃棄物とは?

原子力発電の結果発生する使用済み燃料は、非常に高い放射能を持っており、その中の放射能の高い部分を再処理施設で化学的な処理を行って取り分け、ガラスに固めたもの(ガラス固化体)を高レベル放射性廃棄物と言います。使用済み燃料の大部分は、わが国では現在再処理する前の段階で、貯蔵中ですが、およそ 25,000本のガラス固化体に相当する量が今までに発生しており、各原子力発電所や再処理施設で貯蔵されています。 日本では、最終的にガラス固化体にして処分しますが、海外では、使用済み燃料を再処理せずに廃棄物として処分する国もあります。いずれにしても、液体の状態ではなく固体の状態で処分します。


図1 高レベル放射性廃棄物

ガラス固化体とは?

化学的な処理で発生した放射能の高い物質をガラスに固めたものですが、ガラスに固めると言ってもガラスの瓶に入れるわけではなく、ガラス原料と混ぜてガラスの塊とするもので、高温でドロドロに溶かした状態のガラス原料と放射性廃液を混ぜ、水分は蒸発して出ていくので、冷えて固まると放射能の高い物質はガラス成分に取り込まれ一体となっています。ガラス固化体は、日本では、既に約2000 本程度が保管されています。一つは、日本原子力研究開発機構の再処理施設の運転で約250 本が製造されたもの。もう一つは、フランスおよび英国の再処理施設で日本の原子力発電所で発生した使用済み燃料を再処理して発生したガラス固化体が返還されたもので、これまでに約1,800本が返還され青森県六ケ所村の保管施設で貯蔵されています。今後、青森県六ケ所村の再処理施設が運転を始めれば、運転に伴ってガラス固化体が順次発生していきます。

図2 ガラス固化体の構造

ガラスだと割れて粉々にならないか

ガラス固化体ということで割れて粉々になり放射性物質がでてきてしまわないかと言われることがあります。ガラスですから衝撃には弱く、高い圧力では割れる可能性もあります。そのために、外部からの圧力や衝撃に耐えられる厚い容器の中にいれて処分することが考えられています。また、ガラス固化体の中で放射性物質はガラスと一体になっているのでたとえ割れてもガラスの粒であることに変わりなく放射性物質が出てくることはありません。

高レベル放射性廃棄物は永久に管理が必要?

高レベル放射性廃棄物の放射能は時間と共に減っていきます(処分後1,000 年間で放射能は処分時の500 分の1に減る)。 高レベル放射性廃棄物をガラス固化体として製造した直後は、放射能も高く、熱も多く発生するので、地上の施設で厳重に管理しながら30年から50年程度保管します。その間に放射能が減り、熱の発生も小さくなった段階で処分します。しかし、わずかですが、放射能が残っているので、ガラス固化体に直接触れると影響があるので、長期間にわたって人間の影響が及ばないところに隔離する必要があります。そのために、いろいろな方法が検討されましたが、深い地下に隔離することが現実的に最も良い方法と考えられています。深い地下は、本来安定で、自然現象や地上の大気(酸素)の影響を受けないことから、人間が管理する必要はなく、むしろ人間が何らかの理由で廃棄物に接触しないように、人間が通常の生活で地下まで掘ったりする深さより十分に深いところに埋設します。

図3 高レベル放射性廃棄物の放射能の減衰 (ガラス固化体1本あたり)

ガラス固化体は爆発しないか?

原子力というと原子爆弾を連想するため、高レベル放射性廃棄物も地層処分した後、爆発したりしないか懸念する声を聞きます。しかし、再処理の過程でウランやプルトニウムは分離されるのでガラス固化体中にはほとんど含まれません。したがって、ガラス固化体にわずかに残ったウランやプルトニウムが集まっても原子爆弾のような臨界状態になり爆発することはありません。 もう一つは、放射線の影響で水素ガス等の発生で爆発することはないのかという懸念です。これについては、ガラス固化体をむき出しで地下に埋設するわけではなく、厚い鉄製の容器に入れて埋設するので、容器の外側では放射線の影響は非常に小さくなります。さらに、容器が直接ガラス固化体が水に触れないよう地下水から隔離するので放射能が高い間でも水素ガスが大量に発生することはありません。もし、放射線の影響や腐食で水素ガスがわずかに発生しても地下水に溶け、さらに周りの粘土や岩盤を通って抜けていくので、蓄積して爆発することはありません。 原子力発電所等の他の原子力施設と異なるところは、高レベル放射性廃棄物は、そのままの状態では特に大きな変化はなく、熱の発生も小さいので原子力発電所のように常時監視し、強制的な冷却や制御する必要がないことです。したがって、安定な状態で置いておく限りは、急激に変化したり放射性物質を大量に放出することはなく、人間が積極的に関与して管理する必要はありません。このように人間が管理しなくても安全を保てる仕組みであることが、高レベル放射性廃棄物の対策として、世界各国で地層処分が選ばれている理由です。

高レベル放射性廃棄物の放射能を減らせないか?

高レベル放射性廃棄物の放射能を減らす、または半減期の短い物質に変え放射能が早くなくなるようにする研究が行われています。原理的には放射能を減らしたり他の物質へ変える方法があることがわかっており、実際にそのような方法が確かめられています。しかし、完全に放射能をなくすことはできず、ある程度放射能が残り、放射性廃棄物として処分をしなければならないことに変わり有りません。また、実用化するためにはまだ多くの課題があり、この方法が確立するまで処分を行わないとなると、かえって貯蔵等のリスクを増すこととなり、世界各国でも研究は続けつつ、地層処分はその研究を待つことなく進めています。

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