地域発展の起爆剤―高レベル放射性廃棄物の最終処分場 第 10 回 どうするの? 技術は安全ですか?(2)地層処分の選択

地層処分の選択の理由 高レベル放射性廃棄物を最終的にどのようにするのか。どのような方法が考えられてきて、その技術は安全なのか。その手段として、人間の生活に影響を及ぼさない場所に確実にとどめておくことが必要です。そのような場所として、空(宇宙)、海、地下が考えられました。その中で地層処分が最良の方法として選択された理由や根拠を解説します。

高レベル放射性廃棄物の処分方法

高レベル放射性廃棄物の処分方法については、これまで世界各国で検討が進められて来ました。代表的なものとしては、人間により長期間にわたって管理する方法と人間による管理を必要としない方法があります。しかし、人に直接的に影響がないようなレベルまで管理する場合、数万年以上管理する必要があり、現実的ではあり ません。そのために最終的には人間による管理を必要としない方法が検討されました。この場合でも数万年以上人間から隔離する必要があります。

 
図1 高レベル放射性廃棄物の各種処分方法

図1 にこれまでに検討されてきた代表的な処分方法を示します。宇宙に処分する方法は完全に地球から離れた人間への影響がない宇宙空間に隔離され良い方法に思えますが、宇宙へ確実に廃棄物を打ち上げ地球への影響がないようにするだけのロケットの信頼性がまだありません。万一事故が起こればその影響は自国内に留まらず広範囲に影響を及ぼす可能性があることから絶対的な信頼性が求められます。人間の生活圏から隔離した場所として海洋への処分が考えられます。深海底への処分は、生活圏から隔離されていることに加え、たとえ放射性物質が溶け出してきても海で希釈され影響が無くなることから良さそうに思えますが、海洋へはロンドン条約で、廃棄物等を捨てられないことになっています。 人間からの隔離という意味では人が住んでいない北極や南極の氷床に処分することが考えられますが、南極や北極は国際的に管理された場所で、制度的に放射性廃棄物の持ち込みを禁止しており、安全上は良いとしても現実的ではありません。このように、自国の管理ではなく国際的な管理や取り決めがあるところは、安全上だけでは解決できない問題があります。 廃棄物そのものをできるだけ影響がないようにする方法として、核変換があります。これは廃棄物に含まれる放射性物質を放射能のない物質や半減期が短い放射性物質に変えるもので、原理的には変えることが可能です。現在研究が進められている方法としては、高速炉を使う方法と加速器を使う方法があり、リスクの低減に効果がありますが、すべての放射性物質の放射能をなくしたり半減期の短い物質に変えることはできません。ある程度放射能が残ることから人間からの隔離に必要な期間は短くなるものの処分が不要になるわけではありません。現在は実験装置で手法が確認された段階で、実用化にはまだかなりの時間がかかることから将来的な技術と言えます。 自国内で可能で、また、人間の生活圏から離れた場所として、陸地の地下深部に埋設することが有望な方法として考えられました。 その中で、技術的にも現実的にも可能な方法として、世界各国が共通して選んだ方法が地層処分です。これは、地下深部が、極めて長い時間にわたり物理的にも化学的にも十分に安定した場所であり、大気や酸素がないために錆びたり物が溶けにくく、地下深部では地下水や物質の移動が極めて緩やかであることがわかっていま す。もともと世界各国で検討されたときは、大陸のような数億年にわたって安定な場所が考えられ、日本のように変動帯に位置して様々な自然現象が想定されるようなところでは難しいと考えられました。しかし、火山や断層活動のような天然現象は繰り返し同じような場所で活動しており、地域が限定されることがわかっています。 地下水についても日本のように地下水が豊富で、廃棄物から地下水に放射性物質が溶けだして人間の生活圏まですみやかに移動する可能性がある場所は適さないと考えられましたが、日本の地下でも地下水の動きが遅く数十万年以上滞留して放射性物質が容易に移動しない場所があることもわかっています。 人間の生活環境からほとんど隔離された深さ数千メートル以上の非常に深い穴を掘削して処分する方法も考えられていますが、一旦処分すると再度取り出したり対応することはできず、まだ研究段階で実用化までには課題があると言えます。

地下より地上の方が管理可能で安全ではないか?

地下に埋めてしまって、人間が管理しないと危険ではないか。あるいは、何かあったときに監視していないと危ないのでは。したがって、地上で長期間保管管理して、十分に放射能が減ってから地下に埋めたらどうか。等の考えがあります。 しかし、図2に示したように地上の方が、自然現象やものの動きが地下よりもはるかに活発で、長期間にわたって安定的に保管するのには、地上はかえって不都合です。

 
図2 各種現象と活動の地上と地下の比較

廃棄物等のものが壊れたり、放射性物質が出てくるのは、自然現象で大きな力や熱が加わったり、水が作用して溶けだしたりすることによるものです。地下は、そもそも空気がなく、地下水の動きも非常に小さく、長期間ものを安定に保持します。自然現象で見ても津 波、台風、地滑り等は地下では起こりませんし、地震の揺れも地上に比べて地下の方が数分の一と小さいので壊れにくいです。図3と図4 に地下に長期間埋設されて発掘された例を示しましたが、このように地下の環境では埋まった状態でも物が変化しにくくそのま ま残っていることがわかります。

地層処分の選択

これまでの検討の結果地層処分が最も望ましく有望な方法として選択されています。地下に埋められた考古学出土品がほとんど変化せず発掘されていることからも、安定な環境を有する地下に埋設した放射性廃棄物は何万年以上にわたってほとんど変化しないと考えられます。一方、何らかの理由で人間が掘削して廃棄物に触れたりする危険性もあります。技術的には埋め戻した後も掘削して再度取り出すことも可能ですが、処分場を埋め戻してすみやかに元の地下の状態に戻し、地下が本来有する安定に閉じ込める能力に委ねることが放射性廃棄物を人間から隔離する本来のあり方です。

図3 古代エジプトのガラス(紀元前2900~300 年)

図4 粘土中に埋もれた銅鐸(1800 年前)

ページの先頭に戻る↑