第33号 公明党山口代表による処理水の放出についての発言について
公明党の山口代表が、7月4日の記者会見で「福島の処理水放出は、海水浴シーズンを避けて行うべきだ」と発言しましたが、この真意はどういうことなのでしょうか。
この件について、ある自動生成AIのチャットで問い合わせてみました。
質問 「IAEAによる福島の処理水放出についての報告が岸田総理に手渡されました。 |
回答 「政府は、IAEAの安全基準に合致していると判断し、福島第一原発の処理水を海洋放出する方針を打ち出しています。公明党が反対する理由は、山口代表が「海水浴シーズンは避けるべきだ」と発言したことから、処理水放出について安全性を問題視しているためだと思われます。」 |
どのような趣旨で発言したのかわかりませんが、一般的には「処理水放出についての安全性を問題視しているためだ」と受け取られてしまいます。
このように、この発言は風評を助長するもの以外の何物でもありません。世界的には、EUも、福島産の海産物の全数検査を終了させるべく手続きに入っています。韓国原子力学会の首席副会長も、「処理水の放出を慎重に対応すれば、何か隠蔽しているとみられてしまう」として、処理水の放出を遅らせるべきではないとの立場を示しております。
トリチウムを含む排水は、世界中の原子力施設で常時実施され、それも福島の処理水とはけた違いに多い量が排出されています。
日本海には、中国、韓国の原子力発電所から放出されたトリチウムが黒潮に乗って、また黄砂をもたらす風によって大量にもたらされ、そのトリチウムの海で育った日本海の豊富な魚類(ブリ、ノドグロ、サケ、ズワイガニ等)が食卓をにぎわしています。
発電所では、重水を用いるCANDU炉では、トリチウムの発生は軽水炉に比べて多く、カナダのトロント郊外のオンタリオ湖水とその上空には大量のトリチウムが常時放出され、それが米国側にも流れ込んでいます。
また再処理工場においては、フランスのラアーグ工場やイギリスのセラフィールド工場から、北海名物のサバの産卵生息地に向けて大量のトリチウムが常時放出されています。
福島の処理水についてはIAEAの報告の通り、安全性が問題ではないということが技術的に明確になりました。
漁業組合も、これまで安全性について問題だとは発言しておらず、一貫して「風評が問題だ」と言っています。
このように日本で、世界で、トリチウムが拡散されているのに、なぜ福島の処理水のトリチウムだけがこのような騒ぎになるのでしょうか。
日本の原子力界では、原子力船むつが「放射線漏れを放射能漏れと報道」されて大騒ぎとなり、廃船に追い込まれ、高速原型炉もんじゅはCEAの長官から、「もんじゅは日本の社会問題であるから、技術的に協力することはない」と言われて、最後には廃炉となりました。
このように、日本では原子力の大切な開発方針が、技術的観点ではなく、社会的な噂=風評(Fake News)によって決定されてきています。
いま世界では、地球温暖化の対策として、原子力が不可欠であるということは技術的観点からは常識となっており、開発途上国や産油国まで原子力の活用を図っている状況です。
日本としても、この大切な政治判断を単なるうわさ、風評(Fake News)で左右されて決定するようなことのないように、しっかり決断して実施していくことが大切ではないでしょうか。
風評被害とは、消費者が根も葉もないうわさを信じて右往左往することによって、生産者に被害を与えるものです。
次回の衆議院議員選挙は、原子力発電立地市町村から5名の定員が、東京、神奈川など大都会に移ります。
これまで30年以上福島原子力発電所の電力の恩恵に浴してきた「大都会の消費者=有権者」として、このような風評に踊り、これまでの恩を仇で返すことなくしっかりとした方針を支持していくことが求められているのではないでしょうか。
(桂川正巳 記)
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