高レベル放射性廃棄物処分場(以下「処分場」)に関する国の安全基準(原子炉等規制法第51条の3第2項に定める「原子力規制委員会規則で定める基準」)がまだ定められていない。特に重要なことは「施設周辺住民の放射線被ばく線量の上限」が明確化されていない点だ。このため、処分場の建設にあたる原子力発電環境整備機構(以下「NUMO」)は環境への影響について「高レベル放射性廃棄物からの地下水等の媒介による放射線の影響の年あたりの最大値(基本的なケース)0.000005ミリシーベルト」と説明している。
「施設周辺住民の放射線被ばく線量の上限値」についての記述はない。一般市民にとっては、地下水等による影響という部分的な情報だけでは処分場の安全性の理解は困難である。
地域住民への放射線被ばくの上限を定めるのは安全規制行政の重要な責務の筈である。15年間も立地公募を続けてきたのに文献調査にすら着手できないのは事業主体(NUMO)だけの責任だとは言えない。基本的な安全基準の整備を怠っていた政府の責任も重大である。