最新の地層処分概念は、高レベル放射性廃棄物の放射能を人工バリアおよびその周辺で自然に消滅するまで閉じ込める、地層処分の安全性を地質環境に多く依存しない地層処分技術をもたらしました。その結果として処分地は、公表されている科学的特性マップに示されるように幅広い地層の中から選定することができるようになったのです。
1989 年(平成元年)に至って、先に述べた人工バリアの役割に注目した最新の地層処分概念を開発する原子力委員会の新しい政策が具体化されます。それに伴って、国民の支持を得るには難点がある処分地選定を中心とする政策を棚上げし人材や予算を新しい政策の実現に重点化することになりました。特に、地層処分技術を支える基盤的な研究として、それまで研究資源が投入されてこなかった地下深部の現象を理解することを目的とする地層の科学的研究を進めることになりました。その政策は、1999年に動燃事業団(核燃料サイクル開発機構)による「わが国における高レベル放射性廃棄物地層処分の技術的信頼性」(いわゆる「第2次取りまとめ」)に結実します。その一方で、「地層処分基盤研究施設(ENTRY)」(1993 年完成)および「地層処分放射化学研究施設(QUALITY)」(1999 年完成)(いずれも、茨城県東海村)、さらには二つの深地層の研究施設-幌延深地層研究センター(軟岩-海水系)(北海道幌延町)および超深地層研究所(硬岩-淡水系)(岐阜県瑞浪市)が地域社会の支持を得て実現しました。これらの研究施設は、今日まで世界的な研究施設として多くの研究成果を生み、人材育成、および国際協力の場となっています。さらに、NUMOの地層処分学習支援事業などで多くの見学者を受け入れており地層処分の国民社会の情報共有に貢献しています。